additional fugitive ー増刷する刹那ー

野村在

2013.6.1(sat) - 6.29(sat)

アルマスギャラリーでは6 月1 日(土)から6 月29 日(土)まで、野村在『additional fugitive ー増刷する刹那ー』を
開催いたします。2010 年の門前仲町のスペースでの個展から、2 年半ぶりの野村在の個展となります。

野村在は様々な素材(蜜蝋や油脂の塊、脆いプラスチックなど)を彫刻作品に用いてきた傍ら、 継続して写真を用いた表現を行ってきました。それら様々な表現の中に一貫して現れている彼の制作への姿勢には、 全ての物質が持つ可視化しづらい本質「消滅へと向かう」ことを定着させることへの試みが絶えず現れています。 野村在がロンドンでの滞在期間中に自らの彫刻作品が破損されていく事を目の当たりにした事により、徐々に、 立体作品から写真を用いた彫刻作品の制作にシフトしていったのも、この「消滅へと向かう」表現を永遠に 定着させようとしたある種の矛盾から生まれた苦しみの中から必然的に選ばれていった結果だったのかもしれません。 アルマスギャラリーでの前回の展示では、樹脂の特性を逆手にとった、人間の手では作り得ない形を内包した彫刻群と、 人間の目では捉えきれない物質のフォルムの移ろいをカメラにより固定化した、 写真を使った作品によって構成 されました。 今展では、前回の個展から2年間撮り貯めてきた、写真をより彫刻的に押し進めた表現を公開します。 そこでは物質の特性が剥き出しにされた瞬間を捉えたシリーズが展開されます。 また近年継続して制作されているこのシリーズに加え、新作も展示予定です。 ぜひご高覧いただければ幸いです。
ベルント&ヒラ・ベッヒャーの写真が彫刻と比較して語られるのは、 被写体である給水塔や溶鉱炉を彼ら自らが「無名の彫刻」と呼んでいるからばかりではない。 彼らの作品は「表現」というよりむしろ機械的な記録といった方がよく、そこでは写真表現の プリミティブな構造がむき出しになっている。 つまりそれは「かつて確かにあった」という事実と「今ここにない」という事実との間にある、 ものの在り方の極を残酷に指し示しているということであり、そのことこそが彫刻なのである。 野村 在はずっとネガティブなものに異常に執着を持ちながら制作をしてきた。松葉杖、車椅子、 点字などをモチーフにしながら立体作品を制作してきた傍ら、近年では亀裂や爆発といった、 記録することで初めて可視化される「破壊」に行き着いた野村にとって、 彫刻と写真というメディアとの関わりは必然以上のものがあるだろう。 ものをネガティブにとらえること、つまり「ものの在り方の極」を意識することは彫刻制作の基本だと言っても良いが、 それを先鋭化した果てにあるものは消滅である。消滅させることなく、それを「作品」に導いていくことは簡単ではないが、 その困難なプロセスにこそ名付け難い「豊かさ」がある。そこに野村の制作は深く関わっている。
袴田京太朗(アーティスト)
日時:2013年6月1日(土)-6月29日(土)12:00-19:00 金/土/日のみオープンとなります opening reception 6月1日(土)18:00-20:00 場所:HARMAS GALLERY _______________________________________________________________________________________
野村在 Zai NOMURA
[ プロフィール] 1979 年 出生 2009 年 ロンドン大学/ゴールドスミス校 MFA 修了 2013 年 武蔵野美術大学 後期博士課程造形芸術専攻修了
[ 主な展示] 2013 年「The Dry Land」武蔵野美術大学 博士修了展、gFAL  2011 年「Art Court Frontier 2011」 ARTCOURT Gallery / 大阪 2010 年「Zai Nomura solo exhibition」 Harmas Gallery /東京 2010 年 「Zai Nomura Exhibition ‒beyond the transform-」FAL, 武蔵野美術大学/ 東京 2009 年 「GROUP/GROPE 展」エリア10プロジェクトスペース/ ロンドン 2007 年 「MULTIPLE INTIMACY」オスマンハムディ展示場 イスタンブール/ トルコ 2007 年 「The Fall-In Theatre Interim」アシュウィン・ストリートギャラリー/ロンドン 2006 年 「Copilul Culorilor 展」セヴィリン現代美術館/ ルーマニア
[ 論文] 2013 年 「時間と形態 ̶彫刻的な写真表現の3つの実践̶」博士論文 2011 年 「Considerating Form and Embodiment in Interpretation of Eva Hesse」  武蔵野美術大学大学院博士後期課程研究紀要2011 記載 2009 年 「Formless as Multiplicity Subject with Swarm Theory」 2008 年 「Absent」