drive in the house

保坂毅

2014.1.18(sat)-3.1(sat) 月火休廊 水木金はカフェ併設 土日は展示のみ

アルマスGALLERYでは、保坂毅による『drive in the house』を
1月18日(土)から3月1日(土)まで開催いたします。

保坂はこれまで、多様な面をもつ支持体に色彩を施す絵画を制作してきました。
見られる対象となる支持体もモチーフと考え、様々な面をもつパネルを設計する所から
制作はスタートします。
それぞれの面に発生する光や影の作用も取り込みながら色を選択し、色面、ストライプ、
ドットといった形などを描きます。
実際に作品を目の当たりにすると、支持体のソリッドな造りとはうらはらに手の動きを
感じるような塗りや色彩のにじみ、透明色の重なりなど、ミニマルな中にしっかりと存在する、
絵画としての質を発見できることと思います。

過去作と最新作が入り交じる、保坂の作品を概観できる展示となることと思います。
ぜひご高覧いただければ幸いです。

日時:2014年1月18日(土)-3月1日(土)12:00-19:00 
    月火休廊 水木金はカフェ併設 土日は展示のみ
Opening reception 1月18日(土)18:00-20:00

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明るい複雑と、「不在」の配分
                                 林道郎(美術史/美術批評)

 保坂毅のつくる作品を見ていると、さまざまな現われの形式の背景に、幾何学的な精神が息づいていることを感じない人はいないだろう。その精神はしかし、精密ではあるものの、厳格という言葉からはほど遠い。この世を超越する理想的な概念の世界としての幾何学ともずれている。
 たとえば、子供の頃に六角形の鉛筆を手にし、様々の角度から眺めたり転がしたりしたことや、消しゴムを削って多面体にしていろんな方向で机の上に立ててみたことが、ふいによみがえる。そういった想起が、しばしばやわらかに拡散する光の反映の感覚をともなっているように、保坂の作品も、微妙な光に満ちた小さな大気圏をまとって、目に触れてくる。
 この小さな大気圏はしかし、時間をかけて見ていると、ことのほか複雑な構造をもっていることが見えはじめ、これは鉛筆や消しゴムどころではないぞと、知覚の神経がもぞもぞと活動を始める。複雑というのは少し違うかもしれない。単純に見える作品=物体が、その見かけの単純さゆえに、かえって構造的な謎を持っていることが、避けがたく意識されだす。
 アナグラム的とでも言おうか。その一つの原因は、支持体の構造とその上に塗られた主張の強い色彩の配列が、それぞれ違った分節の論理を持っていることにある。ある視点からは、色彩の配列によって支持体の形状の凹凸の見えが微妙に変形され、逆に、支持体の形状によって色彩の関係が転調させられたりもする。つまり色彩と支持体は、相互的に絡まりあう対位法的な交響を見せ、下層—上層の関係が交換可能な自由さを獲得するのだ。一つの構造的シンタックスの中に、別のシンタックスが組み込まれ、主従関係ではない交差関係を形成する。
 さらに、この「関係」が拡張可能な柔軟性を内包するものだということは、保坂の作品が多くの場合複数のユニットによって成立ち、その順列・組み合わせの可変性を示唆する構造を持っていることに明らかだ。ちょうど手で触って動かしたくなるサイズによって各ユニットが成り立っていることも、そのような想像上の可変性へと見る者を誘う(事実、彼の作品の掛け方は一定ではなく、変更可の場合が多い)。ミニマリズムの彫刻がそのどっしりとしたスケールと重さで、見る者の介入を峻拒する隔絶した存在性を主張することが多いのに対して、保坂の作品は、その軽やかさを通じて、私たちの想像的身体に火をつける。
 ぽっと灯った火は、保坂の作品に必ずなんらかの形で含まれる「死角」によっても大いに煽られるだろう。これも、ミニマリズム周辺の作品が、形式の明示性=隠れなさを基本的な特徴として持つことが多いのに対して、本質的に違うところだ。また、彼の作品は壁掛けであることが多く、表面の多彩と相まって、確実に絵画の伝統に棹さしていると見て間違いないのだが、その絵画の隠れなさとも一線を画す。彼の作品の様々な「相貌」、私たちの移動にしたがってその現われを変える姿は、ある意味で「不在」の周囲に組織されていると言ってもいい。微妙な光の反映や、壁の色彩との関係など、作品の構造を包む環境的要因もまた、この不在を孕む相貌の多重性を、思いがけず豊かにしてくれる。
 「不在」の配分。保坂の作品が見せるいかにも工作的な軽やかさと明るい複雑さの秘密の背後には、いつもその謎が、謎というのはいかにもさりげない仕方で潜んでいる。
                         
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保坂 毅 HOSAKA Takeshi

1980 出生
2005 武蔵野美術大学大学院油絵コース修了

[個展]

2011 「色いろイロ」 A-things (東京)
2009 「Work」遊工房 アートスペース (東京)
2009 「矯めつ眇めつ」 A-things (東京)
2007 Art Trace Gallery (東京)
2006 Art Trace Gallery (東京)

[グループ(企画)展]

2012 「たてよこたかさ=L x W x H」 A-things (東京)
2011 「TRIO -A- DOT」 A-things (東京)
2010-11 「Primary Field II」 神奈川県立近代美術館 (葉山, 神奈川)
2010 「TRIO -A- GRID」 A-things (東京)
2009 「サイボーグの夢」 Art Trace Gallery (東京)
2009 「TRIO -A- STRIPE」 A-things (東京)

[その他]

2008 第23回 ホルベインアートスカラシップ奨学生